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車椅子に座る樹。
車椅子を押すつかさ。
駅を出たふたりは、病院までの近道として公園のオレンジ色のレンガ造りのような通路を通っていた。
公園には昨日積もった、真っ白な雪の絨毯が何処までも続いていた。
だが、人影は殆どない。
冬の夜は、早い。
ほとんどの人が、外には出ていないだろう。
サササササ。
ザクザクザク。
滑るような音と小さな足音が雪を踏みしめるたびに鳴る。
ふたりは自販機の前で止まった。
「大丈夫か?やっぱり普通の道の方がらくだったんじゃないか?」
「うん。かもね」
「ま、いまさらか」
無言の時間が長く感じる。
「……………………………ねぇ、樹」
「ん?なんだ」
唐突に
「もう、走らないの?」
樹に背を向けたまま、つかさが言った。
唐突に響いたその言葉。
その後に、続く言葉はなくて。
ただ、胸が苦しかった。
それは、今の樹にはイタイ言葉。
「………ああ。もういいんだ。諦めたよ」
「どうして?」
嘘だ。
そんなこと本当は望んでいない。そんな眼で見ないでくれ。
「なんでって、そりゃ―――意味ないからだよ。もうシーズンは終わった。それに三ヶ月もまともに歩いてないんだぞ?走るどころか立てやしないよ、筋肉だってほとんどなくなっちゃたしさ」
本当は理由なんてないのかも知れない。これは情けない言い訳だ。