(どうする――――!!)

状況は最悪だった。

あの少女が手を貸してくれるってことはないみたいだし、つかさもトラックに全く気付いていない。

声もなぜか届いていないみたいだ。

肝心の車椅子(あし)も雪に埋まって――――――あし?

医者は何て言っていた?

歩行のリハビリを進めてきた。

骨折は何ヶ月だ?

全治三ヶ月。

「ぐあああアァぁぁァァ――――――!!」

思いっきり叫んだ。

身体からすべての力を搾り出して、ひとつに集中する。

場所は両足。

激痛がビキビキと、音を立てて走りまわる。

そんなことで、迷ってなんかいられない。

だから、地を蹴る足に力を込めた。

自分の心で決めたから。

自分の力を信じる事に決めたから。

好きだとか、好きじゃないとか。

そういうことじゃなくて。

今度こそ、

「待ってろよ!すぐに駆けつけてやるから!」

約束に答えるために。

 

「……樹?」

間違いなく向こうから走ってくるのは樹だった。

あの日の事故以来、樹は走ってなかった。

その走りが目の前にある。

でも、何かが違う。

顔がとっても悲しそうだ。

「――――ろ―――さ―――」

何か言っているらしい。

近付くほどにその声は鮮明になってゆく。

「うしろだ、つかさ!早く逃げろ!」

後ろとは何のことだろうと振り向くと、すぐそこまでトラックが突っ込んできていた。

「――――ッ」

つかさはその場に硬直してしまった。

このままじゃ、助からない。

「くそっ!くっそおぉォォォォ!!」

木霊する樹の叫び声の跡に、

ズガアアンッ、と強烈な音と衝撃が辺りに響き渡る。

突っ込んだトラックが樹にぶつかり停止する。

 

何処かで、錆びた鈴が、カラカラと鳴った。

 

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