「すみませーん!ボールとってくださーい!」
その言葉に、ハッと我に返る。
気付けば一つのサッカーボールが樹とつかさの間を通り抜けた。
まるでそこに壁があるように。
「…………」
「……わたしが、いってくる」
転がるボール追いかけて、彼女は遠くに行ってしまう。
一人残された空間がひどく寂しい。
これを彼女は感じていた。
無人の世界。
小さくなる心。
泣きたくなる、孤独。
「結局僕は、ヒーローなんかじゃないんだ」
唇を嫌というほどかみ締めて、自分への怒りがこみ上げる。
自分で目標を見失った愚か者。
それが僕だ。
彼女を傷つけてしまった。
他でもない、この僕が。
そんなときだ。
「誰もヒーローにはなれないし、なれるんじゃないのかな?」