☆

 

 

声の主は庭師姿の少女、イリスだった。

「自虐して楽しいのか?しょーねん」

嫌みったらしい本。

「……なんなんだよ、お前ら!」

またも突然現れた不思議な存在に、樹は敵意をむき出しにする。

「わたしに怒られても仕方ないんだけど…」

「八つ当たりか」

「うるさい!」

怒鳴ってしまった。

過ぎてから、後悔する。

これじゃ、本当に唯の八つ当たりだ。

「ま、いいけど。言ったよね?この花は君。だから大切にして、て」

 と、一本のカラカラに干からびた、もはやアヤメとも確認の取れない一本の花を差し出して来る。また花だ。

「なんなんだよ、花って!それが、今何と関係してるって言うんだ!?からかいならやめてくれ!」

突き放すように樹は言う。

神様だろうが、何だろうがどうでも良かった。

樹の心はそんな事を考えてる余裕がない。

「この花はあなたの心だから」

「……心だって?」

「そう。だからこの花はこんなにも萎れている」

哀しそうな目で樹を、アヤメの花をみる。

まるで自分のことのように。

目にいっぱいの涙を浮かべて。

「よっぽど辛かったんだな」

本の声が優しく聞こえた。

「………」

樹は何もいえなかった。

事実、そうなのだから。

僕は彼女を傷付けた。裏切りという、最悪の形で。

 

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