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声の主は庭師姿の少女、イリスだった。
「自虐して楽しいのか?しょーねん」
嫌みったらしい本。
「……なんなんだよ、お前ら!」
またも突然現れた不思議な存在に、樹は敵意をむき出しにする。
「わたしに怒られても仕方ないんだけど…」
「八つ当たりか」
「うるさい!」
怒鳴ってしまった。
過ぎてから、後悔する。
これじゃ、本当に唯の八つ当たりだ。
「ま、いいけど。言ったよね?この花は君。だから大切にして、て」
と、一本のカラカラに干からびた、もはやアヤメとも確認の取れない一本の花を差し出して来る。また花だ。
「なんなんだよ、花って!それが、今何と関係してるって言うんだ!?からかいならやめてくれ!」
突き放すように樹は言う。
神様だろうが、何だろうがどうでも良かった。
樹の心はそんな事を考えてる余裕がない。
「この花はあなたの心だから」
「……心だって?」
「そう。だからこの花はこんなにも萎れている」
哀しそうな目で樹を、アヤメの花をみる。
まるで自分のことのように。
目にいっぱいの涙を浮かべて。
「よっぽど辛かったんだな」
本の声が優しく聞こえた。
「………」
樹は何もいえなかった。
事実、そうなのだから。
僕は彼女を傷付けた。裏切りという、最悪の形で。