たぶんそれは、ひどく些細な日常。

僕と、そして彼女のいた風景の断片。

それを繋ぎあわせれば、彼女の気持ちがわかるかもしれない。

そう思いながら、けれど何もできなかった記憶の欠片。

そのひとつをみつけたとき、過る思い。

覚えていない。

そういえたら、どんなにいいだろう。

でもそれは、できない。

『これがあれば安心だよ。音がしたらすぐに駆けつけてあげる』

僕は、いつもいじめられているつかさのために、小さな鈴をひとつ渡した。

金色の小さな鈴。

見失ったって、

いつでも場所がわかるように。

寂しかったら、

すぐに駆けつけられるように。

それが鳴れば、『いつでも助けるから』って僕は言ったんだ。

彼女を守る。

それこそ、使い古されたヒーローみたいに。

思えばそれは、僕の自己満足だったのかもしれない。

誤魔化すのがいやで、嘘をつくのがいやで。

それから…………本心を告げるの怖くて。

ただ、それだけ。

それだけなのに。

それなのに。

 

 

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