雲ひとつない青空の下の庭園で。

 

「どうやら枯れずに済んだみたいだね」

「あーもーだから人間は面倒だよ」

ひとりと一冊と犬は、テーブルの上で向かい合います

「なんでだい?わたしはそうでもないよ」

「ややこしいの。好きなら、好きって言えばいいのに」

 白い犬が言います。

風でページがパラパラと捲られて、やがてとまる。

そこには、白い花がひとつ。

「好きって言葉はね。そんな簡単には言えないから、意味があるんだよ」

「ふーん」

わからないや、と言いたげな感じに頷いた。

「じゃあ、人間は嫌いかい?」

「嫌いじゃないよ。」

犬は拗ねた子供のようにいい、

「今回の思わぬ誤算で、寿命の延びちゃったあの子のこと、どう言い分けする?死に神相手にティータイムなんて、わたしは嫌だよ。あいつらほとんど笑わないのだから」

「あはは、そうかも」

と、イリスは笑った。

「で、いい訳は?」

「んー、間違っちゃいました、で」

「―――ハァー、わかった。適当に誤魔化しておくよ」

「ありがと。感謝しているよ、」

「しているなら、今後はしないで欲しいんだけどね、イリス」

 

そんなある日の昼下がり。

そうして彼らは仕事に戻る。

綺麗な花を、咲かせるための。

人の華やかなる日常を、見守るために。

あなたの華は、何ですか?

 

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